看護師の給料はなぜ上がらない?最新ニュースから見る理由と年収を伸ばす現実的な方法
「看護師の給料は上がりにくい」とよく言われます。
なぜ、そのように言われることが多いのか、実際に上がりにくいのか気になっている人も多いのではないでしょうか。SNSや働いている現場で、「給料が全然上がらない」というコメント・声を見聞きした人もいるかもしれません。
そこで今回は、「看護師の給料は上がりにくい」と言われる理由や真相について、最新ニュースなどを交えながら解説していきます。
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最新ニュースから見る「看護師の給料問題」
まずは、最新ニュースをもとに、看護師の給料問題について考えていきます。
医業は他の産業と比べて賃上げが遅く、夜勤負担に見合っていないことがデータで確認されています。
賃上げがほとんど進んでいない
日本看護協会の調査によると、基本給は2012年から2024年までの12年間で約6,000円しか上昇しておらず、ほぼ横ばいに近い水準であることがわかっています。
夜勤負担の割に手当が低い
また、夜勤手当の平均は、深夜勤は約5,700円、二交代制は約1.1万円で、10年間で約1,000円しか増えていないという実情です。つまり、夜勤は日勤に比べて高負担業務であるにも関わらず、報酬がほぼ据え置きであるということになります。
参照:
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「12年間で6,000円弱しか上がっていない看護職員の基本給。離職防止に向け、処遇改善の重要性を強調――日本看護協会が賃金実態調査結果を発表」
公益社団法人日本看護協会「2024年度看護職員の賃金に関する実態調査報告書」
他産業より賃金が低い
さらに、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に基づき、日本看護協会が作成したデータから、40代後半の看護師の給与は、他産業の従事者と比べて約9.5万円低いことも公表されています。
参照: 公益社団法人日本看護協会「医療従事者の処遇改善について
以上をまとめると、看護師の賃上げは名目上としては実施されているとはいえ、実態としては微増でしかないということになります。
夜勤などの負担増に対しても報酬が追い付いておらず、結果として、他産業との賃金格差が拡大しているのが実態です。
病院の経営悪化
病院の経営悪化については、近年、度々ニュースでも取り上げられています。
厚生労働省のデータによると、医業利益の赤字割合は約55.2%とされていますが、別の調査では、約69%が赤字という結果も報告されています。
つまり、病院の過半数が赤字で、現状としては、“給料を上げたくても上げられない構造”にあるということになります。
赤字が続いている大きな原因は物価高・人件費増で、診療材料費や水道光熱費などの経費に関しても増加していることが報告されています。
なお、病院の経営が悪化する最大の原因は、価格を自由に上げられないことにあります。一般企業であれば、値上げでカバーすることができますが、診療報酬は「国が決める公定価格」であり、インフレでも値上げできないことから、物価高が続くと病院は大きな打撃を受けることになるのです。
参照:
厚生労働省保健局医療課「医療機関を取り巻く状況について」現状と課題
CareNet「病院の6割超が赤字、2026年度改定に向け合同声明を公表/日医ほか」
厚生労働省保健局医療課「医療機関を取り巻く状況について」これまでの議論 現状と課題
診療報酬の引き上げ議論
前述の通り、値上げできないことが経営悪化の最大の原因であることから、医療機関側は賃上げを強く要求しています。
しかし、制度上、すぐに改善することは簡単ではありません。診療報酬改定は2年に1回と決められているため、即時対応ができないのです。
また、社会保障費抑制のために財源に制約がかけられていることもネックとなっています。
こうした背景があることから、小幅改善はあっても、抜本的改善には至っていないのが実情です。
参照: 公益社団法人日本看護協会「令和8年度診療報酬改定の基本方針等に関する検討状況について」
結論|看護師の給料が上がらないのは「構造」の問題
上記に解説した通り、病院の経営が悪化している一番の原因は、“給料を上げたくても上げられない構造”にあります。
先の解説と被る部分もありますが、改めて、“構造”について詳しく解説していきます。
診療報酬制度で収入が決まっている
これは前述の通りですが、医療機関が提供する診療・治療のうち、保険診療に関しては診療報酬が決まっているため、医療機関が自由に治療費を引き上げて利益を伸ばすことができません。
病院としての儲けが伸びないとなると、看護師の給料も金額を上げることができません。※ただし、自由診療に関しては、メニューの価格を医療機関が自由に決めることができます。
病院はそもそも儲かりにくい
国によって診療報酬が定められていることは、保険診療を提供する病院が儲かりにくい大きな原因ですが、それに加えて、コストの大半が固定費であることも、病院が儲かりにくい原因です。
主な固定費は次の通りです。
- 医師・看護師・コメディカルなどの人件費
- 光熱費
- 医療機器
赤字が続き、人件費を増やすことができずにいると、「労働負荷が高いのにこれだけしかもらえないならやっていけない」と人材が流出するリスクが高まります。
光熱費は医療機器などを24時間稼働させるために不可欠なうえ、医療機器は、導入費だけでなく維持費も高額です。
削れる費用がほとんどないのに、診療報酬は据え置きまたは微増で、少子高齢化によって患者数が減少していることから、赤字から脱却できずにいる病院が増えています。
個人の成果が給料に反映されにくい
一般企業の場合、個人の営業や努力が直接売上を作るため、インセンティブという形で、成果が給料に反映されます。これに対して、看護師は何本点滴をしても単価は同じです。
医療は基本的にチーム制(=チーム医療)。個人の成果をわけて考えることはなく、医師、看護師、薬剤師、その他コメディカルなどすべてのスタッフが一丸となって、医療というサービスを提供することがほとんどです。
しかも、患者が回復したとして、医師の腕によるものなのか看護師のケアによるものなのか、リハビリの成果なのかなど、誰の成果であるのかを測ることができませんし、測る理由もありません。
そうした背景もあり、給料は基本的に年功・等級ベースで、勤続年数、役職、資格などをもとに決定されます。しかも、同じ病棟で給与格差が大きいと不満が出て、チーム崩壊のリスクが高まるため、大きな差がつかないよう設計されています。 ※ただし、訪問診療や美容クリニックなどの場合、病院とは違って個人のがんばりが評価されるケースも多いです。
病院は公的役割が強い
病院は一般企業とは異なり、地域医療を守る責任を担っています。不採算であっても、救急対応・夜間対応も必要で、利益を追求しにくい特徴があります。 ※ただし、美容クリニックや不妊治療専門医、審美歯科などに関しては、このような性質は有していません。
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今後、看護師の給料は上がるのか?
看護師の給料が今後上がる見込みがあるかどうかについては、「微増が決定しているが、大幅アップはかなり難しい」と考えられます。その理由を詳しくみていきましょう。
2026年度の診療報酬改定で賃上げが決定している
まずは、“微増が決定している”部分について解説していきます。
2026年度の診療報酬改定では、医師や看護師などの人件費を含む“本体部分”(診療費以外の部分)の改定率が「+3.09%」と決定されています。この部分が3%を超えて引き上げられるのは1994年以来となります。
なぜ、約30年ぶりにここまで高い水準でプラス改定されることになったかというと、近年の物価高騰と賃金上昇によって、病院経営が悪化した結果、現実的に人材確保が困難になっているためです。
なお、+3.09%の内訳と配分は次の通りです。
- 医療従事者の賃上げ対応:+1.70%
- 物価高騰への対応:+1.29%(光熱水費・食材料費等のコスト増対応、過去の物価高騰分の調整、その他一般物価対応分の合計)
- 政策的な評価拡充(医療機能の強化・高度化等):+0.25%
- 効率化・適正化によるマイナス要因:-0.15%
参照: 愛知県臨床工学技士会「2026年度診療報酬改定の論点整理:基礎解説」
政府・業界の議論が活性化している
病院経営が悪化していることへの対策については、政府・医療業界の議論がかなり活性化しています。このことは、日々のニュースを見ていても明らかなとおりで、病院経営悪化に対する国民の関心は高まる一方です。
政府としては、病院の約半分が赤字であり、人でも不足していて医療崩壊リスクが高いことから、「賃上げしないと医療が持たない」と考えています。
看護協会をはじめとする医療業界の当事者たちは、「他産業より賃金が低いのはおかしい。もっと上げてもらわなければ人材を確保することが難しい」と主張しています。
つまり、議論レベルにおいては「賃上げしたい」という点において一致しているということになります。
参照: 公益社団法人日本看護協会「令和8年度診療報酬改定の基本方針等に関する検討状況について」
それでも「大幅改善が難しい」理由
2026年度の診療報酬改定によって多少の賃上げは決定しており、さらに、「もっと賃上げしなければ医療は崩壊してしまう」という考えは、政府・業界に共通するものでありながら、看護師をはじめとする医療従事者の給与を大幅に上げることは、実質的に難しいとされています。
その理由としてはまず、前述の通り、診療報酬改定によって+3.09%の改定が行われたとしても、上がった分がそのまま給与にはならないということが挙げられます。
また、多くの病院の経営がそもそも厳しい状況にあることから、賃上げ原資があったとしても、それを給与に充てられない病院が多いと考えられます。
さらに、診療報酬の制度は複雑で、条件を満たしていないと満額に届かないケースが多いことから、給与が据え置きの看護師も出てくることが考えられます。
2026年以降の予測
以上をまとめると、2026~2027年の「短期」で見ると、月に数千円~1万円程度の上昇はあり得るものの、施設差が出てくることが予想されます。
また、~2030年までの中期で見ると、人手不足はさらに悪化して、追加の賃上げ議論が続くと予想されます。それでも、制度が変わらない限り、緩やかな上昇止まりである可能性が非常に高いでしょう。
さらに、長期的に見ると、他産業との賃金差は残りつつ、一部の高収益分野は上昇する可能性があると考えられます。こうした流れを見越して、今のうちから自由診療にシフトする医療機関が増えていく可能性も考えられます。
給料を上げたいならどうすべきか
世の中が上記のように動いていくことを考えると、看護師が給料を確実に上げるためには、働く場所や働き方を変える必要があるといえます。代表的な方法をみていきましょう。
職場を変える
第一に考えられる方法が、職場を変えることです。給与UPを条件に転職先を選んで、年収を上げるという方法です。
“病院勤務”という働き方は変えずに、場合によっては100~200万円以上年収を上げることも可能です。特に、次のような職場は高収入が期待できる可能性が高くなります。
- 都市部の急性期病院(高稼働・高単価)
- 大手医療法人(給与テーブルが高い)
- 離職率が低い病院(=待遇がよい)
ただし、「忙しさ」はセットでついてくる可能性が高いと考えておいたほうがいいでしょう。
高収益領域にいく
美容クリニック、あるいは再生医療やAGAなどの自由診療クリニックは、いわゆる“高収益領域”であるため、年収が跳ねやすくなります。
なぜこの領域は給料が高いかというと、保険診療とは異なり、価格を自由に設定できるためです。そのため、利益率が高く、売上と給料が直結します。クリニックによってはインセンティブ制度を導入しているため、努力すればするほど年収が高くなります。
年収イメージとしては、一般病院の平均が400~550万円に対して、美容クリニックは500~800万円以上、売上トップともなれば1,000万円を超えることもあります。
しかも、夜勤なしで若いうちから稼ぐことができるのも大きなメリットです。
ただし、カウンセリングや契約などの“営業要素”が大きく、医療スキルが衰えやすいというデメリットもあります。
働き方を変える
「今すぐ収入を上げたい」という場合、夜勤専従や訪問看護など、“稼げる働き方”へとシフトするのも一手です。
夜勤専従の場合、月10~12回勤務で年収は500~700万円が相場であるため、効率よく稼ぐことができます。また、日勤と比べて関わる人間が少ないことから、人間関係のストレスが比較的少ないといえるでしょう。
一方、生活リズムが乱れることは大きなデメリットです。“もともと夜型”などでない限り、体力的に長期継続は難しいと考えられます。そのため、短期~中期で稼ぎたい場合の最適解であるといえるでしょう。
これに対して訪問看護は、基本的に夜勤なし・日勤のみとなりますが、事業所によってはオンコールに対応する必要があります。
年収相場は450~650万円程度ですが、インセンティブ・手当が付きやすいため、努力次第ではそれ以上を狙うこともできるでしょう。
ただし、1日に何度も移動しなければならないことや、基本的に1人で行動・判断しなければならないことは、人によっては大きなデメリットと感じるでしょう。
3つの戦略の比較
上記3つの戦略を比較すると次の通りです。
| 戦略 | 即効性 | 年収上限 | 安定性 | 難易度 |
| 職場変更 | ◎ | ○ | ◎ | 低 |
| 美容・自由診療 | ◎ | ◎ | △ | 中 |
| 働き方変更 | ○ | ○ | ○ | 低 |
なお、今後は確実に“同年代の看護師でも年収差が広がる時代”になっていくと考えられます。
病院に残れば、“緩やかな上昇”しか期待できない一方、戦略的に動けば、100万円以上の年収UPを実現できる可能性が極めて高いといえます。
ただし、前述した通り、それぞれの働き方には、メリットがある一方でデメリットもあるので、「自分にはどの選択肢があっているか」「将来的にも同じ働き方を続けることが可能であるのか」などを考えながら、後悔のない選択をするよう心掛けることが大切です。
看護師の給料が上がりやすい職場の特徴は?
看護師の給料が上がりやすい職場の特徴は次の通りです。
- 利益率が高い
- 給与制度がよい
- (人材不足などで)待遇を改善している
それぞれ詳しくみていきます。
利益率が高い
利益率が高いことは第一条件です。大前提として、儲かっていない職場では給料が上がることはないからです。では、利益率が高いのはどんな職場かというと、次のような職場は利益率が高い可能性が高いです。
- 自由診療(美容・再生医療など)
- 高単価の診療(急性期・専門病院)
- 稼働率が高い(病床が埋まっている)
一方、「忙しいのに給料は低い」場合、低利益構造である可能性が高いです。
利益率が高いかどうかは、次の点を確認すると見抜けます。
- 常に満床・予約が埋まっているか
- 新しい設備投資ができているか
- ボーナスが安定しているか
また、お金の余裕は“現場の雰囲気”にも出るので、転職活動の際には、まず職場見学することをおすすめします。
給与制度がよい
利益があっても、配る仕組みがなければ給料は上がりません。給与制度がよい職場、よくない職場の特徴は次の通りです。
| 給与制度がよい職場 | 給与制度がよくない職場 | |
| 基本給・手当構造 | 基本給が高い (手当頼みにならず、ベースの給与が安定) | 手当依存型 (「夜勤に入らないと稼げない」構造) |
| 昇給システム | 昇給テーブルが明確 (上がり幅や基準が可視化されている) | 昇給停滞 (「昇給がほぼなし」状態が続く) |
| 評価軸・基準 | 評価制度あり (個人の成果や担う役割に応じて還元) | 年功序列のみ (個人の頑張りや実績が評価に反映されない) |
つまり、“がんばっても上がらない構造”になっているということです。
給与制度がよい職場であるのか、給与制度がよくない職場であるのかを見抜く方法は次の通りです。
- 求人票の「基本給」をチェック
- 昇給額(年いくら上がるか)を確認
- 面接で評価制度を具体的に聞く
給与制度は、いわば“将来の年収”を決める設計図であるということをよく覚えておきましょう。
(人材不足などで)待遇を改善している
昨今の医療業界においては、人材不足を解消するために待遇を改善しているかどうかは非常に重要なポイントとなっています。
人手不足で採用競争が起きると、採用する側はいい人材を確保するために給料をアップしていることが多いです。特に、都市部の病院、在宅、一部専門領域などにおいては、この傾向が顕著です。
最近ベースアップした実績がある、入職祝い金・紹介料がある場合などは、“狙い目”といえるでしょう。
なお、離職率が高いことから人材不足に陥っている職場を選ぶと、年収は上がっても忙しさや人間関係の悪さなどのマイナス面に耐えられなくなる可能性があるため、注意が必要です。
追加で見るべき重要ポイント
利益率、給与制度、待遇改善以外に見るべきポイントは次の通りです。
ご提示いただいた病院・職場の「経営状態・将来性を見極める評価項目」を表にまとめました。
| 評価項目 | 詳細・チェックポイント |
| 経営母体の強さ | ・大手医療法人・企業系:給与が高めで安定傾向 ・中小病院・個人クリニック:条件や安定性にばらつきが大きい |
| 稼働率(病床・患者率) | ・高稼働:収益が安定している ・低稼働(暇な病院):経営悪化・経営難のリスクが高い |
| 離職率 | ・低離職率:待遇や人間関係が良好な環境 ・高離職率:職場環境や条件に何らかの重大な問題がある可能性大 |
| 管理職・役職ポストの有無 | ・主任、師長、管理者などへの昇進ルート(上にいける構造)があるか ・ポストが詰まっていると年功序列でも年収が上がりにくい |
| インセンティブの有無 | ・訪問看護(件数連動)や美容医療(売上連動)などの「固定給+変動給」 ・成果が還元される仕組みがあると収入を伸ばしやすい |
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まとめ:看護師の給料アップには適切な環境を選ぶこと
ここまで解説してきた通り、看護師の給料は基本的には上がりにくいといえます。政府も業界も、「上げたい」と考えていて、その実現のためにどうすればいいかを異論しているものの、大幅な改善は期待できそうにありません。
給料を上げたいなら、環境を変えることがもっとも手っ取り早いといえることは間違いありません。
この記事で紹介した方法を参考に、自分にとってのベストな働き方や、自分にはどのくらいの年収が必要であるのかについて、この機会にじっくり考えてみてはいかがでしょうか?