出産手当金がもらえないケース|看護師が引っかかる5つの条件と、申請期限は2年
産休に入る前、多くの人が「出産手当金があるから大丈夫」と考えます。
ところが実際には、条件を満たしていなくて受け取れないケースがあります。
とくに退職を挟む場合と、扶養に入っている場合は要注意です。
気づくのが産後になってからでは、動きようがありません。
この記事では、もらえないケースを先に確認し、
そのうえで申請の期限と、金額の計算方法を整理します。
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出産手当金は「健康保険から」出るお金
まず前提を押さえます。
出産手当金は、勤務先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)から支給されるお金です。
対象になるのは、出産のために仕事を休み、その間の給与が支払われない期間です。
- 産前42日(多胎妊娠なら98日)
- 産後56日
このうち、実際に休んで給与が出なかった日について支給されます。
出産育児一時金(子ども1人につき原則50万円)とは別の制度です。
一時金は出産の費用に対するもの、手当金は休業中の生活費に対するものです。
もらえない5つのケース
1. 国民健康保険に加入している
これが最も多い落とし穴です。
出産手当金は健康保険(被用者保険)の制度で、
国民健康保険には原則ありません。
個人でクリニックのパートをしていて国保に入っている場合や、
フリーランスで働いている場合は対象外です。
2. 夫の扶養に入っている(被扶養者である)
健康保険の被扶養者は対象外です。
出産手当金は「被保険者本人」が働けない期間の所得を補うものだからです。
自分が被保険者なのか被扶養者なのかは、保険証の記載で確認できます。
3. 産休中も給与が全額支払われている
出産手当金は、給与が出ない期間を補うものです。
産休中も給与が満額出る職場では支給されません。
一部だけ支給される場合は、その差額が支払われます。
「給与のほうが手当金より少ない」ときに、不足分が出るという関係です。
公務員や一部の大きな病院では、産休中も給与が支給される規定があります。
自分の職場がどちらかは、就業規則で確認してください。
4. 退職のタイミングが条件に合っていない
ここが看護師でとくに多いケースです。
退職して被保険者でなくなっても、次の2つを両方満たせば、
退職後も引き続き出産手当金を受け取れます(資格喪失後の継続給付)。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
- 退職日に、出産手当金を受けている(または受けられる状態にある)
つまり、産休に入る前に退職してしまうと受け取れません。
産休に入ってから退職すれば、退職後の期間についても継続して受け取れます。
もう1つ落とし穴があります。
退職日に出勤すると、継続給付の対象外になります。
最終出勤日と退職日を同じ日にしないよう、日程を組んでください。
挨拶に行くだけでも「出勤」と扱われることがあります。
被保険者期間の1年は、継続していることが条件です。
転職の際に空白期間があると、そこで途切れます。
転職して1年未満で産休に入る場合は、前職からの継続状況を確認してください。
5. 任意継続被保険者になっている
退職後に任意継続被保険者になった場合、
その資格に基づいて新たに出産手当金を受けることはできません。
ただし、上の4で説明した継続給付の条件を満たしていれば、
そちらに基づいて受け取れます。任意継続かどうかとは別の判断です。
申請の期限は2年
出産手当金の時効は、労務に服さなかった日ごとに2年です。
産休の各日について、その日の翌日から2年で権利が消えます。
産休が終わってから2年ではなく、日ごとに数える点に注意してください。
とはいえ、実務では産後にまとめて申請するのが一般的です。
申請書には医師または助産師の証明と、事業主の証明が必要になるため、
出産後・産休終了後に申請するほうが手続きが1回で済みます。
産前分だけ先に申請することも可能ですが、
その場合は申請が2回に分かれ、証明も2回もらう必要があります。
支給までの期間は、申請書が健康保険に届いてから2週間から2か月程度が目安です。
産休中の生活費として当てにしている場合、入るのは産後になるという前提で
家計を組んでおいたほうが安全です。
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いくらもらえるか
計算式は次のとおりです。
1日あたりの金額 = 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
おおよそ、月給の3分の2が休んだ日数分もらえると考えてください。
たとえば標準報酬月額の平均が30万円なら、
30万円 ÷ 30 × 2/3 = 1日あたり約6,667円です。
産前42日+産後56日の98日分なら、およそ65万円になります。
ここで看護師が損しやすい点が1つあります。
標準報酬月額には夜勤手当が含まれます。
妊娠が分かって夜勤を外れると、その分だけ標準報酬月額が下がり、
手当金の日額も下がります。
体調が最優先なので夜勤を続けるべきという話ではありません。
ただし、日勤専従に切り替えた月が計算に入ることは知っておいてください。
在籍期間が12か月未満の場合は、別の計算方法が使われます。
なお、産休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除されます(本人分・事業主分とも)。
免除されても年金額の計算では納付したものとして扱われます。
出産手当金は非課税なので、所得税もかかりません。
育児休業給付金との関係
出産手当金は産後56日まで、育児休業給付金はその後からです。
期間が重ならないように制度が設計されています。
- 産前42日〜産後56日 → 出産手当金(健康保険)
- 産後57日目〜 → 育児休業給付金(雇用保険)
育児休業給付金は雇用保険の制度なので、加入要件が別にあります。
出産手当金がもらえても育休給付がもらえない、あるいはその逆もあり得ます。
両方を別々に確認してください。
産休・育休中に受け取れるお金の全体像は
看護師が育休・産休中に受け取れる手当とは?受給方法を解説
にまとめています。
産休・育休の実績がある職場を探す
制度としてあることと、実際に取得できることは別の話です。
直近で産休・育休を取得した人が何人いるか、復職しているかは、
働き続けられる職場かどうかの目安になります。
看護師の求人を条件から探すと、
勤務形態や福利厚生の条件から絞り込めます。
面接では「直近1年で産休を取得された方はいますか」と、実績を聞いてみてください。
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よくある質問
Q. パートでももらえますか。
勤務先の健康保険に被保険者として加入していればもらえます。
週の勤務時間が短く、社会保険に加入していない場合は対象外です。
Q. 双子の場合は期間が延びますか。
産前が42日から98日に延びます。産後は56日で変わりません。
Q. 予定日より早く(遅く)生まれたらどうなりますか。
産後56日は実際の出産日から数えます。
予定日より遅れた場合、遅れた日数分も産前期間として支給対象になります。
Q. 転職して半年ですが、退職して産休に入る予定です。
継続して1年以上の被保険者期間がないため、
退職後の継続給付は受けられない可能性が高くなります。
在職のまま産休に入れるかどうかが分かれ目です。
Q. 申請書はどこでもらえますか。
加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)の窓口かサイトで入手できます。
勤務先の事務担当が用意してくれることもあります。
まとめ
出産手当金がもらえないのは、
国保・扶養・給与全額支給・退職タイミング・任意継続の5つのケースです。
なかでも退職を挟む場合は要注意です。
産休に入る前に退職すると受け取れません。 退職日に出勤するのも避けてください。
申請期限は日ごとに2年。金額はおおよそ月給の3分の2です。
産休の予定が立ったら、まず自分がどの健康保険の被保険者なのかを確認するところから始めてください。
参考
- 健康保険法(出産手当金、資格喪失後の継続給付、時効)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「出産手当金」
- 厚生労働省「産前産後休業期間中の保険料免除」
- 労働基準法第65条(産前産後の休業)