キングの目標達成理論とは?3つのシステムと相互行為・相互浸透行為の流れ、患者と共有する看護目標の書き方と例文
キングの目標達成理論は、アメリカの看護理論家アイモジン・M・キング(1923〜2007)が示した看護理論です。患者と看護師が互いの見方を伝え合い、目標を一緒に決めて、その達成に向けて動く過程を看護の中心に置きました。
1981年の著書『A Theory for Nursing: Systems, Concepts, Process』で体系化され、日本では杉森みど里訳『キング看護理論』(医学書院、1985年)として紹介されています。
看護計画で「看護目標を患者と共有する」と言われたときに、何をどう共有すればよいかを考える手がかりになる理論です。この記事では、3つのシステム、相互行為の流れ、目標の書き方を順に整理します。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
キングの目標達成理論の考え方
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 人は、いくつものシステムの中で生きている | 一人の人、人と人との関係、家族や病院などの集団が、互いに影響し合っている |
| 看護は、患者と看護師の相互行為で進む | 看護師が一方的に行うものではなく、2人のやりとりの中で行われる |
| 目標は一緒に決める | 患者と看護師の知覚が合い、目標に合意できると、目標は達成されやすい |
キングは、看護師と患者が互いの状況を正確に知覚し合えると、目標の合意(相互浸透行為)が起こり、目標が達成されるという命題を示しました。
キングの3つのシステム
キングは、看護を考える枠組みとして、3つのシステムが重なり合う「力動的相互行為システム」を示しました。目標達成理論は、このうち個人間システムから導かれた理論です。
| システム | 何を見るか | 主な概念 |
|---|---|---|
| 個人システム | 一人の人(患者・看護師それぞれ) | 知覚、自己、成長発達、身体像、時間、空間 など |
| 個人間システム | 2人以上の人どうしの関係(患者と看護師、患者と家族) | 相互行為、コミュニケーション、相互浸透行為、役割、ストレス など |
| 社会システム | 家族、病院、地域などの集団 | 組織、権威、権力、地位、意思決定 など |
患者だけでなく、看護師も一つの個人システムとして扱われる点がポイントです。看護師自身の知覚や価値観も、やりとりに影響します。
行為から相互浸透行為までの流れ
キングは、患者と看護師のやりとりを次の流れで説明しました。
| 段階 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 1. 知覚・判断 | 患者と看護師が、それぞれ相手と状況を知覚し、判断する | 看護師は「歩行が不安定」と見て、患者は「早く一人でトイレに行きたい」と思っている |
| 2. 行為 | それぞれが判断にもとづいて行動する | 看護師は「歩くときは呼んでください」と伝える |
| 3. 反応 | 相手の行為に、もう一方が反応する | 患者は「いちいち呼ぶのは申し訳ない」と言う |
| 4. 相互行為 | 知覚・行為・反応を重ねながら、互いの見方を伝え合う | なぜ一人で行きたいのか、何が不安なのかを話し合う |
| 5. 相互浸透行為 | 互いの見方が合い、目標と手段に合意する | 「1週間後に日中は一人でトイレに行ける」を目標にし、それまでは付き添う時間を決める |
相互浸透行為(transaction)は、訳書や解説によって「交流」と訳されることもあります。相互行為はやりとりそのもの、相互浸透行為は、そのやりとりの結果として目標に合意できた状態と区別すると分かりやすくなります。
目標達成理論の主な概念
個人間システムの中で、目標達成に関わる概念として、相互行為・知覚・コミュニケーション・相互浸透行為・役割・ストレス・成長発達・時間・空間が挙げられています。解説によっては、ここに「自己」を加えて説明されることもあります。看護計画で使うときは、すべてを並べる必要はありません。知覚・相互行為・相互浸透行為の3つを押さえると、記録に落とし込みやすくなります。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
目標を患者と共有するときの書き方
キングの理論を看護計画に当てはめると、「看護師が決めた目標を伝える」のではなく、「患者と話し合って決めた目標を書く」ことになります。
共有の前に確かめる3つのこと
| 確かめること | 問いかけの例 |
|---|---|
| 患者は、いまの状況をどう捉えているか | 「いまの体の調子を、ご自身ではどう感じていますか」 |
| 患者は、何ができるようになりたいか | 「退院までに、どんなことができるようになりたいですか」 |
| 看護師の見立てと、どこがずれているか | 「私はこう見ているのですが、どう思われますか」 |
3つめの「ずれ」を言葉にして伝えるのが、キングの理論らしい関わりです。ずれたまま目標を決めると、合意(相互浸透行為)にならず、目標が達成されにくくなります。
例文(看護目標と、共有した経過の記録)
長期目標:退院後、自宅で一人でトイレまで歩いて行ける。
短期目標:1週間後、日中は見守りなしで病棟内のトイレまで歩行できる。共有の経過:患者は「人を呼ぶのが申し訳ない」と、ナースコールを押さずに一人で歩こうとしていた。看護師は転倒の危険があると考えていることを伝え、患者の「早く自分でできるようになりたい」という思いを確認した。話し合いの結果、日中は決めた時間に付き添って歩行練習を行い、その間は呼んでもらうことに合意した。目標と練習の時間は、本人の了承を得てベッドサイドに掲示した。
長期目標と短期目標の分け方や、評価できる形にする書き方は、看護目標の書き方で解説しています。
クリアス看護では、正社員の看護師求人を掲載しています。気になる職場があれば、条件で絞り込んで探せます。
正社員の求人を見るキングの目標達成理論を使うときに迷う場面
患者と目標を話し合うのが難しいとき
意識障害がある、認知症が進んでいるなど、患者と話し合うことが難しい場面では、キングの理論はそのままでは使いにくくなります。家族と話し合う、表情や反応から本人の意向を推し量るなどの工夫をし、誰と合意した目標なのかを記録に書くようにします。
患者の目標と、医療者の目標が合わないとき
キングの理論は、互いの見方を伝え合うことを前提にしています。患者の希望が安全面から難しい場合も、否定して終わるのではなく、なぜ難しいのかを伝え、患者の思いを生かせる別の目標や手段を一緒に探します。
ほかの看護理論と何が違うのか
| こういう条件なら | 向いている枠組み |
|---|---|
| 患者と一緒に目標を決め、達成までを追いたい | キング |
| 入院から退院までの、関係の進み方を振り返りたい | ペプロウ |
| 本人ができることを中心に、看護の関わり方の量を決めたい | オレム |
| 環境の変化に、患者がどう適応しているかを見たい | ロイ |
この記事の内容に近い正社員の看護師求人を、クリアス看護で探せます。
正社員の求人を見るよくある質問
目標達成理論は、看護過程のどこで使いますか?
主に看護計画を立てる段階と、評価の段階で使います。目標を決めるときに患者と話し合い、評価のときも「合意した目標が達成できたか」を患者と一緒に確かめます。
相互行為と相互浸透行為は、どう違いますか?
相互行為は、患者と看護師が知覚・行為・反応を重ねてやりとりすることです。相互浸透行為は、そのやりとりを通して互いの見方が合い、目標と手段に合意した状態を指します。
キングの理論は、病棟以外でも使えますか?
使えます。キングは家族や地域などの社会システムも理論の枠組みに含めています。外来や在宅、保健指導など、本人と目標を決めて継続的に関わる場面で使われます。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
まとめ
- キングの目標達成理論は、患者と看護師が目標を一緒に決め、達成に向けて動く過程を看護の中心に置く
- 枠組みは、個人・個人間・社会の3つのシステム。目標達成理論は個人間システムから導かれた
- やりとりは、知覚・判断→行為→反応→相互行為→相互浸透行為の順に進む
- 相互浸透行為は、目標と手段に合意できた状態を指す
- 目標を共有するときは、患者の捉え方・望み・看護師の見立てとのずれの3つを確かめる
参考
- King IM. Toward a Theory for Nursing: General Concepts of Human Behavior. John Wiley & Sons, 1971.
- King IM. A Theory for Nursing: Systems, Concepts, Process. John Wiley & Sons, 1981.
- アイモジン・M・キング著、杉森みど里訳『キング看護理論』医学書院、1985年