看護師の処遇改善手当とは?ベースアップ評価料・看護職員処遇改善評価料の職場別判定表と、給与明細での見え方
看護師の「処遇改善手当」は、国が決めた1つの手当ではありません。病院や事業所が、診療報酬や介護報酬で受け取った賃上げのための収入を、職員の給与に回したものです。
どの制度のお金が入るかは、働いている職場の種類で決まります。病院なら「ベースアップ評価料」と、一部の病院では「看護職員処遇改善評価料」。診療所は外来向けのベースアップ評価料、訪問看護ステーションは訪問看護向けのベースアップ評価料と、2026年6月からは介護保険の処遇改善加算も加わりました。
もう1つ知っておきたいのは、給与明細に「処遇改善手当」という行が無くても、賃上げが入っていることがある点です。ベースアップ評価料は基本給の引き上げに使うのが原則なので、基本給の数字に溶け込む形になりやすいからです。この記事では、職場別の判定表、明細での見え方、職場に確かめるときの質問例を順にまとめます。
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処遇改善手当のもとになる4つの制度
看護師の賃上げに関わる制度は、次の4つです。
| 制度 | 始まり | 対象になる職場 | お金の使い道のルール |
|---|---|---|---|
| 看護職員処遇改善評価料 | 2022年10月 | 救急医療を一定以上担う病院 | 看護職員の賃金改善。3分の2以上は基本給か毎月決まって払う手当の引き上げ |
| ベースアップ評価料(入院・外来・在宅) | 2024年6月 | 届出をした病院・診療所 | 基本給等の引き上げ(ベースアップ)と、それに伴う賞与・残業代・社会保険料の増加分 |
| 訪問看護ベースアップ評価料 | 2024年6月 | 届出をした訪問看護ステーション(医療保険の訪問) | 同上 |
| 介護職員等処遇改善加算 | 2024年6月に一本化。訪問看護は2026年6月から | 介護保険のサービス事業所・施設 | 基本給・手当・賞与などの賃金改善。配分は事業所が決める |
看護職員処遇改善評価料の前には、2022年2月から9月まで国の補助金(看護職員等処遇改善事業、収入の1%程度=月額4,000円)がありました。2022年10月からは診療報酬の評価料に切り替わり、「収入の3%程度(月額平均12,000円相当)」の引き上げを目指す仕組みになっています。
看護職員処遇改善評価料の対象になる病院
対象は、次のどちらかに当てはまる病院です。
- 救急医療管理加算の届出をしていて、救急搬送の受け入れが年200件以上
- 救命救急センター、高度救命救急センター、小児救命救急センターがある
月額平均12,000円は看護職員1人あたりの目安です。病院は、看護補助者・理学療法士・作業療法士などのコメディカルにも配分できます。そのため、看護師本人に届く額が12,000円より少ない病院もあります。
令和8年度診療報酬改定で変わったこと
2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で、ベースアップ評価料は大きく見直されました。看護師に関わるのは次の4点です。
| 変わった点 | 内容 |
|---|---|
| 賃上げの目標 | 2026年度に3.2%、2027年度にさらに3.2%(看護補助者・事務職員は各5.7%)。前回は2024年度2.5%・2025年度2.0% |
| 対象の職員 | 事務職員と40歳未満の医師なども対象に加わった(40歳以上の医師、経営者・役員は除く) |
| 夜勤手当に使える | 夜間を含む交代制勤務の職場では、夜勤手当の増額分も「基本給等」の引き上げとして数えてよくなった。看護職員処遇改善評価料も同じ |
| 評価の段階 | 2026年度と2027年度で段階的に点数が上がる。外来・在宅と訪問看護のベースアップ評価料は、2024・2025年度から賃上げを続けてきた医療機関のほうが点数が高い。入院は入院料そのものを引き上げ、賃上げをしてこなかった病院は入院料を減らす形で区別する |
目標の3.2%を、月給30万円の看護師に当てはめると月9,600円です。ただしこれは医療機関全体の賃金総額で見た目標で、1人ひとりに3.2%を保証するものではありません。
賃上げができたかの判断は、2026年3月か5月時点の給与体系と、その後の給与体系の差で見ます。年齢や勤続年数が上がったことによる定期昇給は、ベースアップに含まれません。
介護のほうでも、2026年6月に臨時の介護報酬改定がありました。処遇改善加算の対象が「介護職員」から「介護従事者」に広がり、介護従事者に幅広く月1.0万円(3.3%)の賃上げを目指す設計です。これまで対象外だった訪問看護(介護保険の訪問)にも、加算率1.8%の処遇改善加算が新しくできました。
職場の種類別:どの処遇改善の制度が入るかの判定表
| 職場 | 入る可能性のある制度 | 看護師への入り方 |
|---|---|---|
| 救急搬送年200件以上・救命救急センターのある病院 | 看護職員処遇改善評価料+入院ベースアップ評価料(外来があれば外来・在宅ベースアップ評価料も) | 2つの制度の分が重なる。明細に別々の手当として出る病院もある |
| 上記以外の病院(療養型・回復期・精神科など) | 入院ベースアップ評価料、外来・在宅ベースアップ評価料 | 届出をしていれば対象。看護職員処遇改善評価料は対象外 |
| 有床診療所 | 入院ベースアップ評価料、外来・在宅ベースアップ評価料 | 届出をしていれば対象 |
| 無床の診療所(クリニック) | 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、足りない場合は(Ⅱ) | 届出をしていれば対象。届出は医療機関の任意 |
| 訪問看護ステーション | 訪問看護ベースアップ評価料(医療保険の訪問)+介護職員等処遇改善加算(介護保険の訪問、2026年6月から) | 利用者の保険の種類で、別々の財源が入る |
| 特養・老健・介護医療院・デイサービスなど | 介護職員等処遇改善加算 | もともと事業所の判断で看護職員にも配分できる。2026年6月からの引き上げ分は介護従事者に幅広く行き渡る前提の設計。生産性向上に取り組む事業所への上乗せ(月0.7万円)は介護職員が対象 |
| 保育園・学校・企業・行政など | 上の制度はどれも対象外 | 医療機関・介護事業所ではないため |
どの制度も、医療機関や事業所が届出・算定をして初めてお金が入ります。勤め先が届出をしていなければ、制度があっても給与には反映されません。
病院や診療所の届出の状況は、各地方厚生(支)局が公開している「施設基準の届出受理医療機関名簿」(毎月更新)で確かめられます。名簿に「外来・在宅ベースアップ評価料」「入院ベースアップ評価料」「看護職員処遇改善評価料」の記載があるかを見てください。
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給与明細での処遇改善手当の見え方
名前は職場ごとに違う
給与明細に出るときの名前は決まっていません。「処遇改善手当」「ベースアップ手当」「評価料手当」「調整手当」など、職場が付けた名前で載ります。手当の名前だけで、どの制度のお金かは判断できません。
「手当の行が無い」のはよくある形
ベースアップ評価料は、基本給か、毎月決まって払われる手当の引き上げに使うのが原則です。賃金表そのものを書き換える病院では、基本給の数字が上がるだけで、新しい行は増えません。
看護職員処遇改善評価料も、3分の2以上は基本給等の引き上げに使う決まりです。残りは賞与や一時金に回せるので、夏・冬の賞与に上乗せされている場合もあります。
介護職員等処遇改善加算は、基本給・手当・賞与のどれで払ってもよい制度です。ただし、加算Ⅳに相当する額の2分の1以上は月給(基本給等)で払う決まりがあります。
2026年6月からは夜勤手当の単価が上がる形もある
令和8年度改定で、夜勤手当の増額分もベースアップとして数えられるようになりました。夜勤1回あたりの手当が6月以降に上がっていれば、それが処遇改善の一部かもしれません。
明細で見るところ
| 見るところ | 確かめること |
|---|---|
| 2026年5月分と6月分以降の基本給 | 定期昇給の時期と別に上がっていないか |
| 手当の欄 | 6月以降に新しい手当が増えていないか、既存の手当の額が上がっていないか |
| 夜勤手当 | 1回あたりの単価が上がっていないか |
| 賞与の明細 | 支給月数や「処遇改善分」の記載がないか |
明細の各項目の意味は、看護師の給料は何で決まる?基本給・夜勤手当・賞与の内訳と、明細の見方で解説しています。
職場に確かめるときの質問例
明細を見ても分からないときは、師長か事務(人事・給与の担当)に聞くのが早い方法です。責める聞き方にならないよう、事実を確かめる形にします。
- 「うちの病院(事業所)は、ベースアップ評価料や処遇改善の加算を届け出ていますか?」
- 「2026年6月以降の賃上げは、基本給と手当のどこに反映されていますか?」
- 「夜勤手当の増額にも充てていますか?」
- 「賞与や一時金で支払われる分はありますか?」
- 「パート・非常勤の職員も対象ですか?」
ベースアップ評価料を届け出た医療機関は、毎年8月に賃金改善の状況を地方厚生(支)局に報告しています。何にいくら使ったかを職場は把握しているので、「6月からの賃上げの内訳を教えてください」と聞けば答えやすいはずです。
処遇改善の届出がある職場の求人を探す
同じ職種・同じ経験年数でも、ベースアップ評価料を届け出ているか、夜勤手当にどう回しているかで、2026年度以降の給与の伸び方が変わります。転職を考えるときは、基本給の額とあわせて、処遇改善の手当の有無と払い方を求人の段階で確かめておきましょう。
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よくある質問
処遇改善手当はいつまでもらえますか?
決まった終わりの時期はありません。看護職員処遇改善評価料もベースアップ評価料も、診療報酬の項目として続いています。令和8年度改定では、2026年度と2027年度の2段階で評価が引き上げられました。ただし、医療機関が届出をやめれば、その分の原資は入らなくなります。
パートや派遣の看護師も対象になりますか?
パート・非常勤の看護師も、その医療機関に勤める職員なので対象に含まれます。業務委託の形で働く人は、ベースアップ評価料の対象職員から外れます。派遣の看護師は派遣会社に雇われているので、賃上げの有無は派遣会社に確認してください。
処遇改善手当が下がった、なくなったのはなぜですか?
ベースアップ評価料は、患者数や職員数が大きく変わると、医療機関が届け出る区分(受け取る点数)が変わる仕組みです。また、手当として払っていた分を基本給に組み入れた場合、手当の行は消えても総額は下がっていないことがあります。手当が減ったときは、基本給とあわせた月給の合計で比べてみてください。
まとめ
- 「処遇改善手当」は1つの手当ではなく、職場が受け取った賃上げの原資を給与に回したもの
- 病院はベースアップ評価料、救急を担う病院はさらに看護職員処遇改善評価料、診療所は外来・在宅ベースアップ評価料、訪問看護は2026年6月から介護の処遇改善加算も加わる
- 令和8年度改定で目標は2026・2027年度に各3.2%。夜勤手当の増額にも使えるようになった
- 基本給に組み込まれて、明細に手当の行が出ないことが多い。5月と6月以降の明細を比べる
- 分からなければ「どの制度を届け出ているか」「どの項目に反映したか」を職場に聞く
参考
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】(令和8年9月4日版)」https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001745823.pdf
- 厚生労働省「疑義解釈資料(看護職員処遇改善評価料及びベースアップ評価料関係)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001698611.pdf
- 厚生労働省 中医協資料「看護職員処遇改善評価料の実績報告について(令和5年10月)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001161695.pdf
- 九州厚生局「届出受理医療機関名簿」https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/index_00007.html
- 厚生労働省「看護職員等処遇改善事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525_00005.html
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算の拡充(令和8年度介護報酬改定)」https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/5_R8_houshuu_kaitei.pdf
- 厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年3月13日)」https://www.mhlw.go.jp/shogu-kaizen/download/6_tsuuchi_kihontekikangaekata_jimushoritejun.pdf