看護師の奨学金は3種類【2026年版】お礼奉公の条件と途中で辞めるときの返還、転職前に契約書で見る条項
看護学校や看護大学に通うために奨学金を借りる人は少なくありません。とくに看護師の場合、「卒業後に指定の病院で一定期間働けば返還が免除される」タイプの奨学金があり、いわゆる「お礼奉公」と呼ばれています。
一方で、就職してから「職場が合わない」「家庭の事情で引っ越したい」と感じても、奨学金が残っていて転職に踏み切れないという悩みもよく聞かれます。
この記事では、看護師が利用できる奨学金の種類と、返還免除の条件、途中で辞める場合や転職する場合に確認しておきたいポイントを、国や自治体、日本学生支援機構(JASSO)の情報をもとに整理します。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
看護師が使える奨学金は大きく3種類
| 種類 | 貸与・給付する主体 | 返還免除の仕組み | 主な確認先 |
|---|---|---|---|
| 病院などの奨学金 | 病院、医療法人、自治体病院など | 卒業後にその病院で一定期間働くと免除されるものが多い | 各病院の募集要項・契約書 |
| 看護師等修学資金 | 都道府県 | 卒業後に県内や指定施設で一定期間働くと免除 | 都道府県の担当課 |
| 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金 | 独立行政法人日本学生支援機構 | 勤務先による返還免除の仕組みはない(給付型は返還不要) | JASSOのウェブサイト・在学中の学校 |
同じ「奨学金」でも、お金を出している主体と、返還免除の条件がまったく違います。自分が借りているのがどれなのかを、まず書類で確認しましょう。複数を併用している人もいます。
1. 病院などの奨学金
病院が独自に設けている奨学金は、看護学生に修学資金を貸し、卒業後にその病院で一定期間働くと返還が免除されるという形が一般的です。この「一定期間働くこと」が、いわゆるお礼奉公にあたります。
病院の奨学金は、法律で統一された制度ではありません。貸与額、勤務する期間、途中で辞めた場合の扱いは、病院ごとの契約内容によって決まります。そのため、一般論で「何年働けば大丈夫」とは言えず、手元の契約書を読むことが何より大切です。
2. 都道府県の看護師等修学資金
都道府県が行う看護師等修学資金は、地域で働く看護職員を確保するための制度です。厚生労働省の通知(看護師等修学資金の貸与について)では、修学資金を受けた人が、免許取得後に200床未満の病院、診療所、訪問看護事業所、介護老人保健施設など指定された施設で5年間続けて働いた場合に返還を免除する枠組みが示されています。現在の具体的な条件は、都道府県ごとの条例や要綱で定められています。
東京都の例
東京都の看護師等修学資金では、月額2.5万円・5万円・7.5万円・10万円から貸与額を選べます。無利子ですが、返還が遅れた場合には延滞利子がかかります(延滞利率3%)。返還免除の条件は、勤務先と年数、貸与額によって変わります。
| 就業先と期間 | 月額2.5万円 | 月額5万円 | 月額7.5万円 | 月額10万円 |
|---|---|---|---|---|
| 都内施設で5年間従事 | 全額免除 | 全額免除(5万円×貸与月数) | 5万円×貸与月数を免除 | 5万円×貸与月数を免除 |
| 指定施設で5年間従事 | 全額免除 | 全額免除 | 全額免除(7.5万円×貸与月数) | 7.5万円×貸与月数を免除 |
| 指定施設で7年間従事 | 全額免除 | 全額免除 | 全額免除 | 全額免除(10万円×貸与月数) |
※東京都保健医療局の案内をもとに作成。都の案内では、免除の条件は原則として卒業直後の就職先で判断すること、指定施設から都内施設(またはその逆)への転職は「都内施設への従事」に含むことが示されています。最新の条件は必ず都の案内で確認してください。
このように、自治体の修学資金は働く場所の範囲(県内全体か、指定施設か)と年数によって免除額が変わります。都外への転出や退学などの場合は、返還が始まるとされています。
厚生労働省の通知の枠組みでは、指定施設で働いている間や、病気などやむを得ない事情があるときに返還を猶予する仕組みも示されています。転職や引っ越しを考えたら、辞める前に都道府県の担当窓口に相談しましょう。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
3. 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金
JASSOの奨学金には、返還が不要な給付型と、返還が必要な貸与型(第一種・第二種)があります。貸与型は、看護師として特定の病院で働いても返還が免除されるわけではありません。
一方で、JASSOには「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」があります。勤務先が従業員に代わって、奨学金の返還額の一部または全額をJASSOに直接送金する仕組みです。JASSOのウェブサイトでは、全国4,852社がこの制度を利用していると案内されており、地域・業種・企業名から導入企業を検索できます。
就職先や転職先を選ぶときに、代理返還制度を導入しているかを確認するのも一つの方法です。
返還が苦しくなったときの制度
JASSOの貸与型奨学金には、本人に返還が難しい事情が生じたときに願い出ることができる制度として、月々の返還額を少なくする「減額返還制度」や、返還を待ってもらう「返還期限猶予」が案内されています。いずれも自分から願い出る必要があります。転職の前後で収入が一時的に下がりそうなときは、返還が滞る前に、JASSOの「返還が難しくなった場合」のページで条件を確認しておきましょう。
複数の奨学金を併用している場合
病院の奨学金と自治体の修学資金を併用していると、それぞれに勤務の条件がついていることがあります。たとえば、病院の奨学金は「その病院で一定年数」、自治体の修学資金は「県内の施設や指定施設で一定年数」といった形です。転職を考えるときは、片方の条件だけを見て判断せず、すべての奨学金について、転職した場合の扱いを一つずつ確認することが大切です。
お礼奉公の途中で辞めたらどうなる?
基本は「残っている奨学金を返す」
返還免除の条件を満たす前に辞めた場合、多くの契約では、免除されなかった分の奨学金を返還することになります。一括返還なのか分割返還なのか、いつまでに返すのかは、契約書や自治体の要綱によって違います。
労働基準法第16条との関係
労働基準法第16条では、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」と定められています。
この条文との関係で、病院の奨学金の契約が問題になることがあります。ただし、借りたお金そのものを返すことと、辞めたことへの違約金や罰金を払わせることは別の話です。個別の契約が第16条に反するかどうかは、貸与の実態や契約内容によって判断が分かれるため、自分で結論を出さず、労働基準監督署や都道府県労働局、弁護士などに相談しましょう。
「辞めるなら貸した額に加えて○○万円払ってもらう」「退職を認めない」など、返還以外の負担を求められて困っている場合も、同じく外部の窓口に相談してください。
転職前に契約書で確認したい条項
奨学金が残っている状態で転職を考えたら、次の項目を契約書や要綱で確認します。
契約書チェックリスト
- □ 貸与を受けた総額と、貸与を受けた月数
- □ 返還免除の条件(勤務先の範囲、勤務年数、勤務形態の指定の有無)
- □ 勤務年数の数え方(休職期間・育児休業期間を含むか、パートでも数えるか)
- □ 条件を満たさなかったときの返還額の計算方法(一部免除があるか)
- □ 返還の方法(一括か分割か、返還期限)
- □ 利息や延滞金の定め
- □ 返還の猶予が認められる事由(病気、進学、指定施設での勤務など)
- □ 返還以外の金銭の支払い(違約金など)の定めがあるか
- □ 連帯保証人の有無
転職時の確認手順
- 契約書・要綱を手元に用意する。見つからない場合は、病院の人事や自治体の担当課に写しを依頼する
- 残りの年数と、辞めた場合の返還額を書き出す。一部免除の規定があるかも確認する
- 貸与元に相談する。自治体の修学資金なら、転職先が指定施設に当たるかどうかで扱いが変わることがある
- 転職先の条件を確認する。代理返還制度や、奨学金の返還を支援する独自の制度があるか聞く
- トラブルになりそうなら外部に相談する。労働基準監督署、都道府県労働局、弁護士など
退職の意思を伝える前に、返還額と返還方法を把握しておくと、話し合いを落ち着いて進めやすくなります。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
これから奨学金を借りる看護学生へ
これから奨学金を選ぶ人は、免除額の大きさだけでなく、次の点も比べておきましょう。
- 卒業後に働く場所を、自分で選べる範囲はどのくらいか
- 働く年数は何年か。途中で進学や引っ越しの予定が入りそうか
- 条件を満たせなかったときに、一括で返す必要があるか
- 病院の奨学金と自治体の修学資金、JASSOの奨学金を併用できるか
特に病院の奨学金は、就職先が早い段階で決まる安心感がある一方、合わなかったときに身動きが取りにくくなることもあります。見学やインターンシップで職場の雰囲気を確かめてから決めると、ミスマッチを減らせます。
看護師の求人を探す
奨学金の返還条件を確認したうえで転職を考えるなら、指定施設に当たる職場や、奨学金の返還を支援する制度がある職場も含めて、求人を幅広く比べてみてください。
よくある質問
Q. お礼奉公中に転職することはできますか?
退職や転職そのものは可能です。ただし、返還免除の条件を満たす前に辞めると、免除されなかった分の奨学金を返すことになるのが一般的です。返還額や方法は契約によって違うため、辞める前に契約書を確認し、貸与元に相談しましょう。
Q. 自治体の修学資金を借りていますが、別の病院に転職すると必ず返還になりますか?
必ずとは限りません。自治体の修学資金は「県内の施設」や「指定施設」での勤務を条件にしていることが多く、転職先がその範囲に入っていれば、勤務期間を通算できる場合があります。通算の可否は自治体ごとの要綱によるため、転職前に担当課に確認してください。
Q. JASSOの奨学金は看護師として働けば免除されますか?
JASSOの貸与型奨学金は、看護師として働くことを理由に返還が免除される仕組みではありません。ただし、勤務先が代理返還制度を導入していれば、勤務先が返還の一部または全額を直接JASSOに送金してくれる場合があります。
看護師専門転職サービス
「クリアス看護」
LINE友だち追加で、希望条件に合った求人紹介や
非公開求人のご案内を無料で受けられます。
給与・働き方・勤務条件など、
転職に関するご相談もLINEで気軽に可能です。
まとめ
看護師が利用できる奨学金は、病院の奨学金、都道府県の看護師等修学資金、JASSOの奨学金の3つに大きく分けられます。お礼奉公と呼ばれる返還免除の条件は、病院の奨学金と自治体の修学資金に多く見られ、その内容は契約や要綱ごとに違います。
途中で辞める場合は、残りの奨学金を返すのが基本ですが、返還以外の負担を求められたときは外部の窓口に相談しましょう。転職を考えたら、まず契約書で免除条件と返還方法を確認し、貸与元に相談することから始めてください。